透明水彩
「君が使ったあの白い装置、覚えているかい?」
「……うん。」
「あれが起動されるのと同時に、あるプログラムも起動されたんだ。」
あたしがこの世界に来るときに使った、あの白い装置。
それと一緒に、プログラムも起動された……?
「まぁ、そのプログラムも秋臣兄さんが開発したものなんだけどね。君とリングの関係性や兵器に関してのデータを、敵味方関係なく、全て破壊し尽くす強力なプログラムだ。」
……あたしは一体、お父さんとお母さんの何を知っていたのだろうかと、一瞬疑問に思った。
こんなにも色々研究して、開発して。
あたしさえもその一部となっているのに、あたし自身は面白い程に何も知らない。わからない。
心中で自嘲し続けるあたしをよそに、叔父さんはただ説明を続ける。
「今、7年前の美凪ちゃんがここにいるということは、7年前の世界に美凪ちゃんの存在は欠けている。もちろん、君と存在を共にするリングもない。いるはずの人間がいない、あるはずの存在がない、その矛盾を利用して作られた僅かな隙をついて、全データを破壊させるんだ。」
データの、破壊……