- π PI -【BL】


淡々とした取調べは一時間もかからなかった。


周は俺と比奈の関係を聞いてきたが、俺には普通の付き合いしかなかったことしか答えられない。


比奈は普通のOLにしちゃ金回りのいい女だった。


俺は気付かなかったけれど、着ているものも持っているものもブランド品ばかりだったらしい。


そう言えば彼女のマンションも割りと高そうな部屋だった……


今になって思い出してみると思い当たる節はいくつかあった。


もちろん主犯の守川も比奈も逮捕され、署に連行されていったわけだけど。


動かぬ証拠……つまりは俺のIDを盗み、そのIDには俺の指紋はもちろん、比奈と―――更には守川の指紋がべったりと付着していた。


落としたIDを拾ったという彼らの証言は認められず、厳しい取調べの中とうとう二人が自白したとか。


俺に鉄壁のアリバイがあったことが効いたらしい―――





すべてを知った今となっちゃ、あのとき何が何でも周の腕を振り切り、


会社に戻るべきだった。



比奈のことを見逃してやりたい―――そんな気持ちじゃない。



周の正体を―――





知りたくなかった。






知らないままだったら、良かった―――











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