ガリ勉くんに愛の手を
「僕、大苅勉と申します。小林さんとは同じ塾生です。」

「へぇ~、それがどないしたん?
その様子やと今の話聞いてたな?あんたが真理亜の代わりに払ってくれるんか?」

「い、いえ…」

なんてあつかましい男だ。

「真理亜、まさかこいつか?お前の好きな男って?!
こんなしょうもない男の為に…」

くすくすと笑い僕をバカにした目でみている。

「しょうもない男はどっちですか?」

その言葉に男が切れた。

「なんやとー!、お前、誰に向かってもの言うとる!!」

男は僕の胸ぐらをぐっと持ち上げて、今にも一発パンチを飛ばしそうになった。

僕は最初から殴られる覚悟で目をつぶった。

「や、やめて!勉君は関係ないの。
私が全部悪いのよ!」

男の腕にしがみつき、必死で止めようとする真理亜。

真理亜の泣き叫ぶ声に他の客までこっちの様子を覗っている。

周りを気にしたのか、男がその手を緩めた。

(く、苦しかった。息が止まりそうだ。)

恐怖で足がガタガタ震えている。

(大丈夫、落ちつけ、勉。)

平常心を失わないように自分に言い聞かせる。

気持ちを落ち着かせ、ポケットに入っていた1枚の紙を男に差し出した。

「なんや、これ?」

男はその紙を開いて目を通した。

「それは佐奈さんが襲われた時、彼女の体内から採取された精液の分析表です。」

「な、なんやて?!」

「これがどういう意味かわかりますか?

この用紙を警察に届けると、あなたは婦女暴行の実行犯で逮捕される事になります。」

「う、うそや。俺、頼まれただけやし…」

男は急に動揺し始めた。

「疑うのなら一緒に警察に行って、はっきりさせましょう。」

「ちょ、ちょっと待ってえや。俺はこの女に頼まれただけや。

実行犯はこの女やから俺は操られただけや。」

「確かにその通り。でもあなたも同罪です。

そして、今あなたは、その事で真理亜さんを脅迫している。

それも立派な脅迫罪ですよ。」

「・・・」
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