ガリ勉くんに愛の手を
母はその言葉を聞いても顔色一つ変えていなかった。

(ママは知ってたんだね。パパの事を…)

そう思うと、急に父への怒りがこみ上げてきた。

(ママを平気で裏切るなんて許せない!)

僕は今まで胸に溜めていた思いを一気に父へとぶつけた。

「パパはずっと僕の憧れだった。
パパのような医者になる為に今までがんばって来たんだ。

それが、僕の夢だとずっと信じていたのに…
僕は、パパみたいな大人にはなりたくない!」

そう言い残し、走って家を飛び出した。

「勉―――っ!!」

母の叫び声…

それは、僕に置いて行かないでと必死で訴えているようだった。
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