ガリ勉くんに愛の手を
「でも、僕はやって良かったと思っているよ。
アルバイトをするようになって、色んな人と出会えたし、色んな事を教えてもらったんだ。」

「色んな事?あんな場所で遊び人たちに何を教えてもらうんだ?
お金の使い方か?人の騙し方か?!」

「パパ、誤解だよ。みんな良い人たちなんだ。悪く言うのはやめて!」


バシッ!!

僕の頬に激痛が走った。

「勉!」

始めて父に殴られた瞬間。

「いつから、親に反抗するようになった?
お前をそんな風に変えたのはそのクズどもだ。」

その言葉を聞いて怒りより悲しみがこみ上げてきた。

「パパ…あの人たちが人間のクズなの?
[ミナミ]ってそんなに汚い所?

僕はお金の使い方も人の騙し方も教わってない。

パパみたいに地位や名誉、お金がなくてもみんながんばって生きているんだ。

とっても暖かい人たちなんだ。」

「お前はお坊ちゃん育ちで世間知らずなんだ。
そいつらに騙されているんだ!」

「騙しているのは、どっちだよ…」

「何?!」

父の顔が急に変わった。

「ママがかわいそうだよ。」

「つ、勉…?」

その瞬間、父からさっきの勢いは消えていた。

(勉…何を知っているんだ?ま、まさか?!)

父に対する怒り、母に対する哀れみ。

僕は自分を抑えきれなくなっていた。
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