ガリ勉くんに愛の手を
「ごめん、遅くなって。
だいぶ待った?」

(さ、佐奈さん…)

僕の目の前が一瞬にしてバラ一色に変わった。

いつもの佐奈ではない。

真白いブラウスにスカート姿。

それは、化粧の濃い[ガングロギャル]ではなく、まさしく[ひまわりさん]だ。

「ちょっと、あんまりジロジロ見やんといて!
恥ずかしいやんか。」

(か、かわいい…)

僕の頬が真っ赤に染まった。

「じゃ、行こうか?」

「は、はい。」

スタスタと映画館の中へ入って行く佐奈を後ろから追いかけていく。

やっぱり主導権は佐奈がにぎっている。

ゆっくりと館内のライトが消え、スクリーンに映し出される映像。

僕は映画なんてどうでもいい。

今は隣りに座っている佐奈の顔だけをじっと見ていたい。

「ちょっと、ベン。
さっきからどこ見てんの?
映画見えへんの?」

気付かれた。

「い、いえ。」

それもそのはず。

まともに横しか向いてないのだから…

あまり露骨な態度を取ると嫌われてしまうかも知れない。

(そうだ、肝心な事を忘れていた。
映画を見ないと作戦を実行する事ができないじゃないか!)

僕は途中から映画のラストシーンを見逃さないように集中した。

そして、待ちに待ったラストシーン。

グスン、グスン…

すすり泣く声。

ゆっくりとハンカチを取り出して手渡す。

「はい、これ。」

「どうも。」

「そんなに感動したん?」

「うっうっう…
だって…こんなに…良い映画…初めて見たから…」

泣いているのは佐奈ではない。

僕自信だ。

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