ガリ勉くんに愛の手を

健二とまりは番組収録を終え、次の予定を打ち合わせしていた。

「健二さん。
昨日、佐奈さんと一緒に食事にいったんですけど、カード使わせてもらいました。」

「あ、ああ。そうなんや。
ありがとう。」

「じゃ、これカードの控えです。」

健二はその紙を受け取って急に青ざめた。

「ま、まり、昨日…
佐奈とこの店行ったんか？」

「ええ。私、前から一度行きたかったんですよ。
正直、高いし自腹ではとてもとても…」


「そんな事、どうでもええ。
佐奈は？佐奈はどうした？」

「え？ああ、実は…
食事の途中で私が席を外している間にいなくなったんですよ。」

「え？！佐奈は先に帰ったんか？」

「よくわからないんですけど。
そのあと携帯にかけてもつながらないし…」

健二は、まりから詳しい事情を聞き、急いで佐奈のマンションへと向かった。

（なんて事や。
よりによって俺と同じ時にあそこにおったとは…）

車の中で何度も佐奈の携帯を鳴らす。

（出ない。）


―佐奈のマンション

ドンドンドン…

「佐奈、いてるか？！」

玄関のチャイムを鳴らし、ドアを叩く。

「佐奈、開けてくれ！」

佐奈は部屋の中にいた。

（健二、もう顔も見たくない。）

「佐奈、開けてくれ!」

（そうや、合鍵持ってたんや。）

健二は、慌ててカバンの中からカギを取り出した。