ガリ勉くんに愛の手を
中に入ると、部屋中灯りが消え、真っ暗になっていた。

健二はリビングから、すべての部屋を探し回った。

そして寝室の隅で小さくまるまっている佐奈を見つけた。

「佐奈、昨日の事は誤解や。」

「…もういい。
うち全部わかってるから。」

今さら、どんな言い訳をされても昨日の事は事実。

この目に焼き付いて消すことはできない。

「そうか、全部知ってるんや。
確かに俺は昨日ある女性とホテルに行って朝まで一緒に過ごした。」

佐奈が耳をふさぐ。

「聞け!お前には信じられへんやろうけど、これも仕事や。

今度、大事なCMの主役を決めるオーディションがある。
そのプロデューサーと…」

「もうやめてっ!
それ以上聞きたくない。」

「仕事をとる為に仕方なかったんや。」

(仕事?)

「健二はいつから、そんな軽い男になってしまったん?

仕事の為やったら誰とでも寝れるの?」

健二が一瞬、黙り込んだ。

「うち、もう無理や。
あんなとこ見てしまって健二とやって行く自信ない…」

そう言われて健二の表情が次第に厳しくなっていった。

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