ガリ勉くんに愛の手を
ちあきのマンションで今、まさに僕は追い詰められていた。

ちあきにズボンを脱がされ下着一枚に。

ちあきはすでに全裸で僕の上に乗っている。

「勉君、まずはキスをしましょう。」

(ダ、ダメ!それだけは。
僕のファーストキスは佐奈さんって決めているんだから。)

顔を必死でそらしながら、ちあきに抵抗した。

「どうせ今度のCMで相手役の子とキスするの。
今から練習しないと間に合わないわよ。」

こんな事ならオーディションなんか受けなければよかった。

「さぁ、こっちを向いて、早く!」

絶体絶命に陥った時、目の前に浮かんだのは佐奈の顔。

一瞬、ちあきの顔が佐奈に見えた。

(佐奈さん…)

もうこの状況から逃れる術はない。

これがこの世界の掟ならば従わなければならない。

僕はちあきを佐奈だと思い込む事でキスに応じる覚悟を決めた。

(佐奈さん、ごめんなさい。)

僕はゆっくりと目を閉じた。


その時、
♪ピンポーン♪

誰かがインターホンで呼び出している。

「誰かしら?」

ちあきは慌ててバスローブをはおると、リビングの方へと向かった。

(助かった~。)

僕は危うく難を逃れた。

ちあきはリビングでインターホンに出た。

「はい、どちら様?」

「ちあき、私、あゆ美。」

(あゆ美?)

ちあきはいいところで邪魔されて腹を立てている。

「一体どうしたのよ。
帰ったんじゃなかったの?」

ちあきの強い口調に一瞬ひるむあゆ美。

「ご、ごめんなさい。
忘れ物をしてしまって…」

「忘れ物?
わかったわ。今開けるから。」

そう言ってマンションの入り口を開けてやった。
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