ガリ勉くんに愛の手を
「一つ忠告しておくけど、マネージャーの仕事はタレントをスターにする事なのよ。

その為なら手段を選ばない、この業界の常識よ。」

「確かにちあきの言うとおりかも知れない。
でも、私は勉君のマネージャーとしてこの子を守りたいの。」

あゆ美のその真っ直ぐな目を見てちあきは視線を僕にやった。

「さぁ、あなたもこの優しいマネージャーについて早く帰りなさい。」

ちあきは捨てゼリフを残して中へと入って行った。

マンションを出て僕とあゆ美は無言のままただ歩いていた。

「あゆ美さん、来てくれてありがとう。」

「何言ってるの?!
私はあなたのマネージャー失格だわ。」

「どうして?」

「だって、最初にちあきからあなたを置いて行けって言われた時にこうなる事は薄々気づいていたんだもの。それなのに…」

あゆ美の声が震えている。

(あゆ美さん、泣いているの?)

あゆ美は僕に涙を見せないように顔をそらした。

「勉君、もうだめかも知れない。」

あゆ美が弱音をはくのは初めてだ。

「ごめんね。力不足で…」

「何言ってるんですか?
まだ終わった訳じゃありませんよ。
僕を選んでくれたのはあゆ美さんでしょ?
僕には可能性があるって言ってくれたじゃないですか?
あゆ美さんが諦めてどうするんですか?」

(勉君…)

その言葉を聞いてあゆ美の瞳に輝きが戻りつつあった。

「そうよね、私が見つけたんだもの。
あなたには無限の可能性がある!
絶対いけるわよ。」

僕が待っていたのはその言葉だ。

「僕、あゆ美さんがマネージャーで本当に良かった。
最後までよろしくお願いします。」

(勉君、ありがとう。)

「よし!あと一日しかないけど、明日は最後の特訓よ。
びしびしやるから覚悟しときなさい!」

「ひぇ~、恐ろしい!」

ハッハッハッハ…

僕たちに残された時間はあと1日。

ちあきに見放された今となっては正直絶望的かも知れないが、僕とあゆ美は最後まであきらめない。

夢に向かってやれるだけやる。

そう決心した。
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