ガリ勉くんに愛の手を
ちあきは重い腰を上げ、待っているスタッフ全員に声をかけた。

「すみません、このまま休憩を取りましょう。」

健二はその場を離れようとするちあきに詰め寄った。

「ちあきさん、どうしてダメなんですか?
俺は完璧に演技したじゃないですか!?
何がダメなのかはっきり言って下さい!」

ちあきはそんな健二に対し、

「確かにあなたの演技は完璧だったわ。」

「じゃ、どうして?」

「何も感じなかった。
わかる?これじゃ見ている人に何も伝わらないのよ。」

ちあきの言葉にショックを受ける健二。

(お、俺の演技が…?)


一人になって思い悩むちあき。

(こんな事になるとは思いもしなかった。)

ちあきの中で迷いが生じていた。

納得の行かないままこれを使うか、それともCMを中止にするか……


健二はテントに戻って一人たばこに火をつけた。

(フー、これ以上どないせえっちゅうねん。)

さっきちあきが言った言葉の意味をもう一度思い起こしてみる。

(気持ちが伝われへん?どういう事や?
まさかこのまま撮影をやめるつもりじゃ……)

健二の脳裏に一瞬、不安がよぎった。
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