ガリ勉くんに愛の手を

[この場所から]

街は白や青のイルミネーションできれいに彩られ、恋人たちのクリスマスソングが流れている。

しかし今年のイブはマフラーや手袋も必要ないぐらい温かい。

これじゃカップルたちも寄り添ってイチャイチャもできなくなってしまう。

いや、どうやらそんな心配はいらないようだ。

ミナミのあちこちでピッタリと寄り添うカップルたちが愛を確かめ合っている。

そんなカップルたちもあの映像が流れるたび、足を止めてその世界に入り込んだ。

【君に伝えたい…】

そう。

僕と佐奈が雪の中で抱き合うシーン。

正直、僕は恥ずかしくてまともに見る事ができなかった。

このCMはちあきの予想以上に若者たちの人気を集めているようだ。

そんな中、ここにもそれを見ながら主人公になり切っている二人の女性がいた。

彼女たちは高島屋の入口から向かいにあるマルイビルの大型スクリーンに映るその映像を見ながら何やら話している。

「なぁ、ユリ。
うち、このイケメンの事マジで好きになったわ。」

みゆきの発言を軽く聞き流す親友のユリ。

「ああ、そうですか。」

「うち本気やで。絶対彼女になってみせる!」

「はぁ~、みゆきはいつもそうやん。
心変わりが早すぎ。」

「今度は違うで。
うちはこのイケメン一筋でいくからな!」

「はいはい。でもこの人、もともとミナミにおったんやて。」

「それやねん!こんなイケメンがミナミにおったら、うちが気付けへんはずがないやろ?!」

確かに君は僕をこのミナミで一番に探してくれたね。


「あ~今どこにいてるんやろうな?」

みゆきは諦めきれない様子で画面に映る佐奈を恨めしそうに見ていた。

「結局、このCMだけ出て芸能活動もやってないらしいで。」

「もったいない!
絶対スターになれたのにな!」
< 385 / 401 >

この作品をシェア

pagetop