ガリ勉くんに愛の手を
その頃、【たこ萬】では…

カウンターに腰をかけ、テレビを見ているおじさんと中でたこ焼きを焼く佐奈がいる。

「なぁ、佐奈。
なんで今日はこんなに暇やねん?」

客一人いない店内でぼやいているおじさん。

「仕方ないやろ?!今日はクリスマスイブやで。
誰が恋人同士でたこ焼き食べに来るん?
やっぱりオシャレなお店に行くやろ。」

「そんな事ない!中には変わったカップルもいてるしな。
このソースの匂いをかいで入口から入ってくるヤツがおる!」

ガラガラガラ…

「ほら来た!いらっしゃーい。」 

「こんばんは。」

おじさんがイスから飛び上がって入口へとやってきた。

「おぉー、ベンやないか?!久し振りやな~。
よーきたな。早く中入れ。」

僕の肩をつかんで再会を喜んでくれた。

(ベン!?)

そしてカウンターから僕の顔を見るなり顔が真っ赤になった佐奈。

僕も同じ。

お互い目を合わせた瞬間、変な雰囲気が店中に漂っていた。

「お、お久しぶりです。」

「え、あ、あぁ、ホンマやな。久し振り。」

本当は少し前に会ったのに。

あんな形で……

緊張して顔が熱い。

その様子を見ていたおじさんは…

(なんや?こいつら。ずっと会ってないはずやのに、なんかおかしいぞ?)

二人をジロジロと疑いの目で見ている。

「とりあえず、佐奈!ビール2杯。」

「えっ!?おっちゃん、僕まだ未成年だから飲めませんよ。」

「こんな日ぐらい良えやんか。」

「あかんよ。おっちゃん!ベンはお酒なんか飲まれへんって。」

「佐奈、ベンはもう大人や。いつまでも子供扱いしたらあかんで。」

「べ、別に子供扱いなんかしてないし。」

おじさんもムキになって突っ込んでくる。
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