誓~天才演技者達の恋~

明日香は満足そうな笑みを見せると、賢斗から離れる。


「あんたとのゴシップなんて、人生の汚点になりかねないわ」

「......失礼だな。これでも俳優だぞ!」

「あんたは、たかが俳優。
私は世界の大財閥のご令嬢よ!!」


賢斗は苦笑いを浮かべると、店に一足先に入る。

明日香は賢斗の背中を見つめると、はぁー。とため息を漏らした。


「明日香?席、ここにしよう」


それは、外が見える席。

明日香は頷くと、心で呟いたことを口に出す。


「明日香って、勝手に呼ぶなー!!」

「だって、みんな明日香じゃないのか?」

「明日香様、又は霧島様よッ!立場を考えなさい。た・ち・ば・を!!」


賢斗は腹から笑うと、明日香に座るよう言った。

まだ腑に落ちない明日香は、渋々座る。


「さて、どこから言えばいいのかな?」


明日香の目の前に座って、賢斗は言う。

明日香はコーヒーを啜りながら、賢斗に目を合わせた。


「真実から」

「.......」

「言って」


明日香はコップを机に置く。

カチャリと静かな空間に響く音。


「菊花ユリア...
芸能人のYuriaは...

キミが考えている通り、白野百合亜で間違いない」

「私の父が乗った飛行機...。それに百合亜は乗ったのよね?」


霧島の社長。
つまり明日香の父親が亡くなったのも、あの飛行機事故だ。

その話は有名で、明日香はあの時“同情”をかなり受けた。


「....死んだんじゃないの?搭乗者全員...」

「百合亜の場合、死んだって思われただけなんだ」


賢斗がそう言うと、明日香は無表情のまま「そう」と言う。

そして明日香はキッと賢斗を睨んだ。


「百合亜を卓也に返してあげて」
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