誓~天才演技者達の恋~

「好きだ」

『...そうか。なら良かった』


卓也はソファーから起き上がり、電話を握り締める。

賢斗は、大きく息を吸っていた。


『俺は、社長から何も言うなって言われてる。
俺も最初、そのほうがいいんじゃないか?って思ってた。

ユリアは一生、記憶喪失の可能性があるから。

だから、ワザワザ記憶喪失って世間に言う必要は無い。

でも、俺が嫌なんだ。
芸能界は華やかだけど、時には残酷だ。

ユリアが二股女やら、記憶喪失は演技なんじゃん?お得意の...なんて言われたら、記憶喪失でも辛い。

だから俺は言う。
ユリアとは元々付き合って無かったって...。

自分が香織社長に気に入ってもらう為に、娘のYuriaに近づいた...って』

「信じるのか?記者達は...」


賢斗は電話の向こう側でため息をつく。

卓也は、賢斗の気持ちが伝わって、胸が苦しくなる。


『信じてもらえないかも知れない。

だけどいいんだ。
自己満足かもしれないが、そのほうがいいんだ。』

「最後に確認していいか?」

『なんだ?』


卓也は携帯を一度、耳から離す。

そして、深呼吸をした。


「Yuriaは、本当に...白野百合亜なんだよな?」


賢斗が、電話の向こう側で笑っている。

卓也も釣られて笑った。


『心配するな。
ドッキリとか、たまたま偶然が重なっただけ!とかっていうオチじゃない。

ちゃんと白野百合亜は生きてるよ』


賢斗はそう言うと、卓也の言葉を聞かずに電話を切った。

タイミング良く、楽屋に灰田が入ってくる。


「卓也。車の準備できた。
この後、歌原社長と話し合い的な..感じだから」

「あぁ、分かった」
< 188 / 252 >

この作品をシェア

pagetop