誓~天才演技者達の恋~
お母さんが持ってきた台本を、百合亜は大切そうに抱えていた。
そして漢字に悪戦苦闘しながらも、百合亜は遊び心で演じる。
卓也にとってその瞬間の百合亜は、惚れてしまう一つの要素。
どんな女の子よりもキラキラと輝いていて、誰よりも可愛かった。
「卓也ッ!!」
卓也は百合亜の病室の前で、拳をつくる。
菊花ユリアは今、白野百合亜に戻った。
「クソッ...クソッ!!」
卓也がドアを開ければいいのかも知れないが、こんな惨めな格好で会えるはずが無い。
やっと百合亜と会えるのに、なんて嬉しく無いんだろう。
「知ったの...知っちゃったの...」
百合亜はボソリと呟く。
卓也はドアに耳を当てた。
「私...卓也が20までしか生きられない事、知ってた」
「!!!!!!!!」
「二人で夢に手が届くまでは、想いを伝えないし、想いを分かち合うのは止めようって決めてたのに...私が急かしたから...ハリウッドなんかに行こうとするから」
「百合亜....」
「だからバチが当たったんだ!!」
病室から、ハデな音が聞こえる。
花瓶か何かが割れた音だろう....。
でも、卓也は何もできなかったし、病室に入ろうとしなかった。
「思い出さなきゃ良かったんだ...オマエは...百合亜はバカだ...」
崩れていく卓也の身体を、龍牙が支える。
「聞いてたのか」
「いや、お前がヤバそうだったから来た。」
「そうか.....」
「なぁ、卓也」
龍牙は卓也と目を合わせながら、口を開ける。
「百合亜にとって、思い出す事が幸せなんじゃないのか?」
「.....?」
「これで百合亜は、酷だけど、オマエの死を見届けられる」