ちょこれーと
「怒ってますか?」
真剣な表情で彼は問う。
「…お、怒る理由がわからない…ん、だけど…」
「この間から、顔合わせてくれないから」
そう言って、彼は私の掌をもう一度やさしく包み込んで歩きだした。
手をつないだまま、エレベーターで彼の部屋のある5階を目指す。
無言のまま、エレベーターを降りて、彼の部屋の前で足が止まった…
このまま、中に入ったら…
きっと…
「どうしました?」
「か、帰る…」
「紗依さん?」
「手、離して…帰るから…」
「だめです。リベンジしますって、この間言いましたよね。」
言ったけど、言ってたけど…
私、同意してないし…
彼は、何もなかったかのように玄関のカギを開けて中に入った。
手をつながれたままの私も当然玄関の中…
「紗依さん…俺ね、ずっと…」
青柳君が言葉をつづけるのを、空いている掌で彼の口を覆って止めた