最後の恋
『わっ!』
午前中の仕事が終わり、ボーッとしながら化粧室を出た時だった。
『ちょっ』
その声と同時に、肩に触れてきた手を私は思わず振り払っていた。
『あっ、すいません…いきなり』
『あっ、ご、ごめん、何かビックリしちゃって』
振り返ったそこには、あの椎名が立っていて、私を見下ろしながら気まずそうに笑った。
『な、何?』
いきなり現れた椎名に、ついつい出てしまった言葉。
『うわ、ひど!何っていうか。昨日の電話でお昼は一緒に昼飯行こうって言ってたでしょ?』
そう言って椎名はニッとはにかんだ。
あぁ…そっか、そういやそんな話してたよね。
『ごめんごめん。じゃあ、何食べ』
言いかけたその時だった。
『あー!椎名くーん!』
背後から聞こえてきた彼女の声に、私はひどく動揺した。
早川さんだ。
『昨日は残念だったよー、あんまり話せなかったし』
近付いてくる声が、私の横で止まる。
『椎名くん先に帰っちゃって、寂しかったんだよー?』
そして隣に立った彼女が、猫撫で声で椎名にそう言った。
繋がる視線。
変なことを言わないように、椎名にアイコンタクトをする。
『えっ?あー、ごめんな!』
そうそう、それでいいよ椎名。
『あたしもバッティングセンター行きたかったー!』
『アハハ、じゃあまた機会があれば』
そうそう、その調子。