最後の恋


椎名は目をまん丸にして私を見ている。


「いや、だからあれだよ、あれ」

「あれ?」

「だから…待ち合わせに遅れたら嫌だし…早めに来たら早すぎちゃったみたいで」



言いながら、カーッと顔が熱くなっていくのが自分でも分かるくらいだった。


目も合わせられないくらい、なんだか恥ずかしかった。


こいつ、張り切りすぎじゃない?とか思われてたらどうしようとか、一瞬のうちにたくさんのことが頭の中に浮かぶ。


だけど。


「ははっ、ほんま莉奈さん可愛い」


無邪気な笑い声とニッと笑う笑顔。

目の前に立つ椎名はゆっくりと私に近付いてきて。


「早く来て良かった。予定より40分も早く会えたんやもん。なんか得した気分っす」


そう言って私に手を差し出す。


「えっ?何?」

「何って手っすよ。繋ぎましょ!」

「えっ…」


躊躇いもなく差し出された手。

私の方が年上なのにいちいちドキドキしている。

ダメ。こんなんじゃダメダメ。


差し出された手にそっと手を伸ばし、そして私は平然と手を繋いだ。


こんなことくらいでドキドキしてちゃ、先がもたない。

私は大人よ、大人!


歩き出す椎名の隣で自分自身に何度も言い聞かせながらドキドキする胸の内を隠した。

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