最後の恋



「やっぱりちょっと気持ち悪いかも」


駅の改札を抜け、家へと帰る道のり。

私に付き合って無理してワインを飲んでいた椎名は少し気分が悪そうな顔で歩いていた。


「だから言ったじゃん、無理しないでねって」


笑いながら白い息がこぼれる。

とても寒い夜だった。


手を繋いで歩く私達。

ふと後ろを振り返ると、長く伸びた影のシルエットに何だかすごく幸せな気持ちになれた。

真ん中で繋がる手と手。

やっぱり私、椎名が好きだ。



「莉奈?」



幸せな気持ちで影を見ていたその時、突然聞こえてきた声に前を向くと、そこには何故かサトルが立っていた。


どうして?何でサトルが…



「莉奈さん誰?」


繋いでいた手を軽く引っ張られ、ハッと我に返る。


「君は?」

するとサトルが椎名に向かってそう聞いた。


「見て分かりません?俺は莉奈さんの彼氏です」


椎名は何かを悟ったように強い口調でサトルに言葉を返す。


「え、彼氏って君いくつ?」

「23っすけど」

「23?マジかよ」


サトルと目が合い、思わず逸らした。


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