最後の恋
誰かのために食事を作るなんていつぶりだろう。
慌ただしく料理をしていると、そんなことを考えた。
一人暮らしだと普段は簡単なものしか作らない。
誰かが遊びに来た時ぐらいしかまともな料理はしていなかった。
それに、料理は得意な方ではない。
器用でもないし、胃袋がつかめるかどうかは謎だ。
だけどハンバーグだけは自信がある。
高校生の頃にお母さんから教わった松永家のハンバーグ。
サトルもその前に付き合っていた人も、ハンバーグだけはいつもベタベタに褒めてくれた。
椎名も美味しいって言ってくれるかな?
ぼんやりとそんなことを考えていた時、インターホンの音が部屋に鳴り響いた。
わ!もう来ちゃったんだ。
「玄関開けてあるから」
慌ててオートロックを解除した私は椎名にそう言うと、散らかったキッチンの洗い物を始めた。
なんだかドキドキする。
しばらくすると玄関のドアが開く音が聞こえ、その直後リビングのドアがゆっくりと開いた。