最後の恋


誰かのために食事を作るなんていつぶりだろう。

慌ただしく料理をしていると、そんなことを考えた。

一人暮らしだと普段は簡単なものしか作らない。

誰かが遊びに来た時ぐらいしかまともな料理はしていなかった。


それに、料理は得意な方ではない。

器用でもないし、胃袋がつかめるかどうかは謎だ。


だけどハンバーグだけは自信がある。

高校生の頃にお母さんから教わった松永家のハンバーグ。

サトルもその前に付き合っていた人も、ハンバーグだけはいつもベタベタに褒めてくれた。


椎名も美味しいって言ってくれるかな?


ぼんやりとそんなことを考えていた時、インターホンの音が部屋に鳴り響いた。


わ!もう来ちゃったんだ。


「玄関開けてあるから」


慌ててオートロックを解除した私は椎名にそう言うと、散らかったキッチンの洗い物を始めた。

なんだかドキドキする。


しばらくすると玄関のドアが開く音が聞こえ、その直後リビングのドアがゆっくりと開いた。

< 208 / 418 >

この作品をシェア

pagetop