最後の恋
必要あるかないかなんて聞かれたら…
「ないよ…」
そう答えるしかなくて。
「分かった。じゃあ俺、今からゴミ捨て場に捨ててくるわ」
「…うん」
「いいやんな?」
「うん…いいよ」
私がそう答えると椎名は紙袋を手にしたまま部屋を出て行った。
確かに、早くどうにかしないといけなかった。
サトルにもちゃんと答えを伝えなきゃいけない。
だけど、自分の手じゃなく椎名の手によって指輪の入った紙袋を捨てられるのは、少し違うと思ってしまう。
嫌な思いをさせていたのかもしれないけど…そう思ってしまう自分がいた。
しばらくして椎名が戻ってくると、その手にはもう紙袋はなかった。
本当に捨ててきたんだ…
そう思うと、何だか不思議な切なさを感じた。