最後の恋


……ダメだ。


やっぱり…これじゃ違う気がする。



思わず立ち上がり、私は勢いよく家を飛び出していた。



マンションのゴミ捨て場に向かい、気がついたら紙袋を探している自分がいた。


すぐに見つかった。

だけど…

中に入っているはずの指輪のケースがない。


紙袋から転がり落ちた?

汚いとか、そういう気持ちも忘れて、夜の暗いゴミ捨て場を這うように必死で探していた。



だけど、指輪のケースは見つからなかった。



誰かが持っていってしまったんだろうか。

どこにいってしまったんだろう。


家に戻り汚れた手を洗いながら、失ってしまったものの大きさをひしひしと感じた。


生まれて初めてプロポーズされて、初めて渡された指輪。

中身もまだ見ていなかった。


どんな形をしていたんだろう。

選んでくれたのに…見もしなかった自分。


サトルに申し訳なくなった。

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