最後の恋


「それでは、これから新郎新婦より、それぞれのご両親へ花束を贈呈されます。
それに先立ちまして、新婦からご両親へ感謝の気持ちを込めたお手紙がございます。新婦エリさん、よろしくお願いいたします」



司会者の言葉と共にに、照明がゆっくりと落ちていくと、高砂席で立ち上がったエリとシン君にスポットライトが当たる。


そして、会場後方にもスポットライトが当たると、エリとシン君の両親が金屏風の前に並んで立っていた。


ダメだ、また泣きそう。


手紙を開くエリの手が、微かに震えている。


そして、

「お父さん、お母さん、……」


手紙を読み始めたエリの言葉が涙と共にすぐに止まると、俯いた私の目からも涙がポタポタと落ちてしまっていた。


エリ、頑張れ…

大丈夫…頑張って…


エリの顔を見たらもっと泣いてしまいそうで、私は俯いたまま心の中で何度もそう言った。


頑張れ…エリ。



「結婚をすると決めた日から…今日までは短かったけど……結婚を喜び、私達を温かく見守ってくれたこと、本当に感謝しています」


震えながら絞り出すようだった声は、次第にハッキリと力強くなった。


まっすぐに、両親へ向けて気持ちを伝えようとしているエリ。

そんなエリを、私は友人としてかっこいいと思った。


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