ハニートースト ~カフェで恋したあなた~
「じゃあ・・・・・・あんなこと言うべきじゃなかったな」
片桐さんは両手で頭を抱えて、大きく息を吐いた。
あんなことって・・・・・・
何だろう。
「昔さ、大人になったら結婚してやる、みたいなこと言ったことがあったんだ。覚えてないと思うけど」
「覚えてる!!!!!!」
大きな声でそう言って、片桐さんの手を握ってしまった。
嬉しかった。
まさか覚えてくれているなんて・・・・・・
信じられない。
「片桐さんが覚えてくれてるなんて、夢みたいだよ」
「お前も覚えてたんだ」
「忘れられるわけないよ。大きくなったらお嫁さんにしてやるよって言ったんだよ、片桐さん」
あの夕暮れの色も、あの時の胸のときめきも、全部全部覚えてる。
体に、心に、染み込んでる。
「あの日さ・・・・・・俺はお前に救われたんだよ」
「違うよ。私が救われたんだよ。お母さんのこと思い出して、突然涙が出てきて・・・・・・」
片桐さんは、真剣な顔をして私の目を見つめた。
やっぱりこの目が好き。
この真っ直ぐな目。
「実はな・・・・・・あの日、みゆきが海外に行ったんだ。他に男がいるって知って・・・・・・どうしていいかわかんねーくらいに落ち込んでて。気付いたらあの店にいて・・・・・・」
そうだったんだ。
悲しかったのは、私だけじゃなかったんだ。