【短編】咎(とが)
肆(よん)
いつの間にか、わたしは家に帰っていた。

どうやって帰ってきたのか覚えていない。どの道を通ったのかも分からない。

わたしの頭の中で、同じ言葉が延々と、くるくる、くるくる、回っている。


人を殺した! 人を殺した! 人を殺した! 人を殺した!


家に着いて、お財布の中から鍵を取り出して、ドアの鍵を開けて、玄関で靴を脱いだら。

母親の、耳の鼓膜を破らんばかりの金切り声が飛んできた。

「ちょっと、学校はどうしたの!」

最近、母親のヒステリーが増えた。環境の変化、が原因なんだって。

こんな田舎に引っ越してきて、近所付き合いがうまくいかなくなってきて、ストレスが溜まってきて。

「担任の先生から電話があったわ!学校に、行ってないそうじゃない!」


……、わたしの苦しみには、気づいてくれなくて。


喚く母親を振りほどいて、階段を駆け上がって、自分の部屋に飛び込む。

ベットに入り、布団を頭から被って、また震える。

……とんでもないことをしてしまった。

恐怖、後悔、自責。

様々な念が、襲い掛かり続ける。

ふるえて、ふるえて、ふるえて。

ふるえ続けて。

どれくらい時間がたったんだろう。気がつけば、わたしは眠ってしまっていた。

ドアの外から、母親と父親の会話が聞こえてくる。

……、もう、仕事が終わって、帰ってきてたんだ。
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