カラス君と黒猫さん
「・・・・・・・黒猫さんって、俺が黒猫さんって呼ぶことに何も言わなかったね」
ちらり、と首を竦めたまま黒猫さんは俺を見遣った。
「・・・・・・・別に、みんなからもそう呼ばれてるし、カラス君だってそうでしょう」
彼女は大きな欠伸をした。
「あー眠い・・・・・・・・」
(黒猫さん見てると何か平和・・・・・・)
「そうだね。俺もカラスって呼ばれるのに違和感無いわ」
「私最近下の名前で呼ばれたこと無いよ」
ふふ、と黒猫さんは笑って見せた。
それに笑い返して。
「全く一緒。」
「親を恨むぜ」
わざとらしく悪戯な顔をして、黒猫さんはまた前を向いて歩き出した。
「カラス君そういえば、たまたまここに居た、って事になってたよね。どんなたまたま?」
こんな裏路地、一部の人しか来れないよ。
(・・・・・・・あぁマズい)
まさか、黒猫さんを追っ掛けてきました、なんて言えない。
「・・・・・・・・迷った、」
「迷った?」