カラス君と黒猫さん
「お、黒音。授業中だぞ。どうした?」
廊下を歩いていた黒猫さんに数学の担当教師が声をかける。
相変わらず絆創膏は貼ったままだ。
「・・・・・・・・・移動教室に、遅れて」
「おいおい、気をつけろよー。
はい、教科書ページ63、」
遅刻した黒猫さんを大して気にした様子も見せず、先生はそのまま授業を続ける。
黒いセーターを着込んだ黒猫さんはそのままふらりと行ってしまった。
(何か遅刻したって言う理由、嘘っぽそう)
そう思わず思った自分を少し、自嘲した。
まだ、出会って少ししかない俺は黒猫さんの何を知っているのだろうか。
少なくとも、物凄い数のバイトはしてそう。
(いけね。最近授業まともに受けてなかったから分かんない)
思い耽っていた自分をすっ飛ばして、今は授業に集中しようと思い、目の前の真っ白のノートを睨んだ。