カラス君と黒猫さん
「黒音さん、ちょっと」
中年の、少し太った警察官が黒猫さんを手招く。
黒猫さんは立ち上がり、少し離れた所に歩いた。
「肥田に聞くと、学校に無断でバイトしてるようだけど?」
「はい」
何の気も無いように、警察官の質問に淡々と答える黒猫さん。
「何でバイトをする必要があるのかな?もしかして、多額なお金が必要だとか」
「いや。だた、父が居ないんで。」
(父が居ない・・・・・・・・・)
「それは、仕事で?」
「死にました」
(・・・・死んだ。随分自棄な言い方だなぁ)
淡々と喋る黒猫さんに驚いたように目を開く警察官。
だけど、次には手慣れた様に紙に書き込んで、
「そうか。家庭的な事情で働いておるんだな。いやぁ、立派だ。それなら、我々は何も口出しをする事は無い。今、学校の校長に来てもらって居る所だが・・・・・・、」
「あぁ、じゃあ私、もう帰っていいんですか?」
「問題は無い。ただ、明日学校で話があるかもな。家に帰りなさい」
そして黒猫さんは、無言のまま俺の近くにやってきた。