天神学園高等部の奇怪な面々Ⅹ
ジワリと着流しに滲む鮮血。

「兄上!」

「ピィピィ叫ぶな月姫…こんなん唾でもつけときゃ治らぁな…」

事実、宜虎の傷は出血の割には深手ではなかった。

しかし。

「そらっ」

翡翠の斬撃は、次々と矢継ぎ早に繰り出される!

見えない訳ではない。

だが捌くには容易くない。

威力こそ然程ではないが、回避にも防御にも手こずる速さと手数。

微かに刃が掠める度に、宜虎の着流しに血が滲む。

…決して深手ではない。

それはわかっているものの、出血というのは動揺を誘うに十分なものだった。

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