木漏れ日から見詰めて
 手摺に掴まらないと落ちそうな外付けの急勾配の階段を上がって部屋の前に立った。

 両隣の部屋は空き部屋で借りたい人のために管理人の連絡先を記入した張り紙がドアに貼ってある。

 ノックをしても返事がなく、しばらく突っ立っていたが、金色の握り玉を捻ってみるといとも簡単に回転した。

「す、すいません」
 そっと声をかけてみるが人の居る気配はしなかった。

 ただ、狭い玄関の上がり口には白地にピンクのラインが入ったスニーカーと緑色のパンプスがきちんと揃えられている。

 視線をおもむろに上げると窓の脇で倒れている女の人を発見した。

「紺野さん!」
 ぼくは土足のまま畳の部屋に入って紺野さんの体を揺すった。

 ぐっすり眠っているような彼女の顔を見て不安がこみ上げ、名前を叫びながらさらに激しく揺さぶると紺野さんは僅かに目を開けた。

「だれ?」

 か細い声をぼくの耳がとらえた。

 それからすぐに携帯で救急車を呼んでぼくは付き添った。

 担当した医師の話だと容態は思わしくなく、しばらく様子を見守るとのこと。



 
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