色をなくした世界
そんな雄大を青山は悲しそうに見ていた。


(・・・・雪乃ちゃんの事でこんなに悩んでいたとは・・・・)


ただ・・・このままここにいては雄大が壊れてしまうという事だけは、青山にも分かった。



「その時が幸せ過ぎたんだろ?だから・・・・」



その頃から抜け出せない。



「いつまでも三人でいれば醜い部分を知らずにすんだもんな?でもな・・・人は成長していくんだぞ?いつかは雪乃ちゃんも旦那を思い出にして歩き出す。そうしなければいけないと言い続けたのはお前だろう?」



泣き続ける雪乃に・・・それでも前に進めと。



「それに雪乃ちゃん・・・前に言ってたぞ?旦那が亡くなって、死にたいとしか思えなかった自分に、生きろとお前が言ったと。通夜も葬式も終わり、これで思い残すことがなくなったと思った時お前がきて・・・」


あの日の事はよく覚えている。


通夜も葬式も間に合わず、雪乃を心配しながら家に行った・・・すると今にも和哉を追いそうな雪乃がいた。


一人にしたら確実に死ぬ。


雪乃の目は何も映していなかったから・・・



「世界に色がついたと言っていた。旦那がいなくなり、色をなくした世界が・・・もう少しだけ生きてみようと思って来てみたら、今が楽しくなってたって笑っていたぞ?」



そんな事を雪乃が言っていたなどとは知らなかった・・・あの時はいっぱいいっぱいで・・・ただ雪乃をここにつなぎとめる事で一生懸命だった。
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