色をなくした世界
先輩たち一人一人の挨拶が終わり、コーチが「解散」と言った時・・・そこにいたはずの雪乃の姿はなかった。



雄大達が輪に入り「雪ちゃんは?」と聞けば、忘れ物したから取りに行くと言ってたよと同じ一年の子が教えてくれた。



お礼を言い雪乃を探せば・・・・ロッカールームで泣いていた。



誰にもばれないようタオルで顔を隠し、声を殺して泣く姿に雄大も和哉もかける言葉は見つからなかった。



そのままそこで立ち尽くしていれば、いきなり出てきた雪乃と鉢合わせる。



すぐに取り繕い見なかったふりをしようとした雄大と、真正面から雪乃を見て「お疲れ様」とタオルを出した和哉。



それが雄大と和哉の違い。



そして雪乃は・・・・和哉を選んだ。



でも雄大が雪乃を本当に好きになったのもあの瞬間。



誰にもばれないよう・・・・雪乃が泣いていたあの時だった。





「普段結構泣き虫な雪ちゃんが誰にも見つからないよう泣く姿に・・・・守ってあげたいって思ったんだ」



誰でもなく自分が。


< 147 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop