色をなくした世界
止まっていた雄大の時計が・・・私の時計が・・・動き始める音がした。



「そうだよ。雪ちゃん。俺週末に転勤が決まったんだ」



雄大が決心したように言った言葉に、分かっていたものの・・・雪乃は愕然とした。



(雄大君が・・・・転勤・・・・?)



「前から言われていたんだ。九州に行ってほしいって。でも断ってた」



雪乃の側にいたかったから。



「でも・・・・良い機会だと思う。だから・・・行くよ。それを雪ちゃんに伝えに来たんだ」



泣いてはいけないと思うのに・・・涙が溢れてくる。



「本当に・・・・行くの?」



雄大が行くと言った以上、これはもう決定事項なのに・・・行かないでほしいと心が揺れる。



それが友人としてなのか・・・異性としてなのか・・・雪乃にはまだ分からない。



ただ・・・雄大がいなくなるのは・・・・嫌だった。



「行くよ。もう決めたんだ。だから雪ちゃんにさよならを言いに来た」



雄大も自分の元を去っていく・・・でもそれは誰のせいでもない・・・自分のせいだった。
< 150 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop