色をなくした世界
どれだけ泣いただろう・・・顔をあげれば、優しい一馬の笑顔があった。


「泣きやんだ?」


そう言ってタオルを差し出す手は・・・少しだけ震えている。


「一馬・・・・ありがとう」


色んな意味を込めて言ったありがとうを、一馬は笑顔で受け止めてくれる。



「良いよ・・・俺も雪乃・・・いや、雪に感謝している」



雪乃という呼び方は大切な人に・・・そう言われた気がした。



「雪・・・・幸せに・・・」


タオルは返さなくていいからと言うと、一馬はその場所を去って行った。



一人になれば・・・雄大の事を思い出す。



海に入ったあの日・・・雄大は駆けつけた後、病院までずっと抱きしめてくれていた。


ところどころ聞こえてくる声は・・・雪乃に「死ぬなよ」「生きろよ」と言っていた。


その声に・・・・死ねないと思ったのだ。


雄大の声があの日・・・雪乃に生きる力をくれた。


そして雄大の存在が・・・雪乃に新しい心をくれた。


雄大に・・・会いたい。
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