色をなくした世界
春日谷一馬・・・唯一の雄大の同期だった。


どこか人と変わっていて、自分の好きな事にしか興味がない。


しかし一馬が撮る写真は雄大が知る誰よりも綺麗で独特なものだった。


「何でまた・・・・自分からカンボジアを志望したんじゃなかったでしたっけ?」


数年前大手の出版社からカンボジアで写真を撮る若手を一人送ってほしいと言われ、雄大と一馬の名前が出た。


その時どうしても自分が行くと言って、数日後には旅立っていったような奴だった。


「数年かけてやっていた仕事が終わったと先方から連絡があった。先方が皆引き返すのに、春日谷だけ帰ってこないのは・・・おかしいだろう」


好きで帰ってくるわけではないということか・・・同期という事で他の者よりは一馬と話す雄大だったが、一馬が何を考えているのか全く分からない。


そして自分が呼ばれた意味を理解した。


「という事だ。春日谷の事はお前に任せる」


思った通りの言葉が返ってきた為、雄大の顔も歪む。



「俺では・・・あいつの面倒は見きれませんよ?」


任されても困るのだと訴えるが、そこは青山の方が上手である。
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