色をなくした世界
「期待はしていないよ。あいつが周りの奴とそれなりに馴染めるよう協力してやってくれ」


それだけ言うと、お前に用はないと追い払われた。


出て行こうとする雄大に、青山は思い出したように声をかける。


「今月も・・・雪乃ちゃんからは3日に休みの申請が出ていたよ・・・」


毎月毎月雪乃は和哉の月命日に休みをもらっていた。それ以外はほとんど出る為、誰も文句は言わなかったが・・・心配はしていた。


「指輪も・・・外さないしな」


未だに雪乃は和哉との結婚指輪をしている。


今では周りも知っている為「結婚してるの?」と聞く者はいないが、その姿を時々痛々しいように見る者はいた。


夫に先立たれ指輪を手放さい妻もいるだろう。


しかし雪乃はまだ若い。


周りは皆、雪乃にもう一度人を愛してほしいと願っていたが・・・・その思いを雪乃だけは知らない。



「仕方ないですよ。和哉が死んでまだ一年もたっていないんですから・・・」


自分に言い聞かせるように雄大は呟く。
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