色をなくした世界
「それが人にものを聞く時の態度ですか?あんたって言われて名乗るような名前、私にはありません」


雪乃がキッと睨めば、一馬も面白そうに雪乃を見る。


「ふーん。でも俺あんたの名前知らないし」


「あんたって呼ばないで下さい。それに名前を聞くならまず自分から名乗るものでしょう?」


周りの酔っぱらいは雪乃たちの突然始まった言い合いを楽しそうに傍観している。


ところどころ雪乃に味方をする声が含まれていたが・・・。


「俺は春日谷一馬」


それだけ言うと今度はお前の番だと言わんばかりに雪乃を見る。


こんな自己紹介で自分の名を名乗るのは癪だったが・・・これ以上言い合いしても大人げないと思い直し自己紹介をした。


「私は・・・か・・宮田雪乃です」


風間と言いそうになり、違ったと言いなおす。和哉が亡くなった時、和哉の両親と雪乃の両親が話し合い、雪乃は宮田に戻ったのだ。


一馬は雪乃が言い間違えた事を全く気にはしていなかった。


「宮田さんはこんな遅くまで大丈夫なの?」


一馬が時計を指すが、雪乃には一馬の言っている意味が分からない。


「もう遅いよ?」


確かに時計は23時を回ろうとしている。しかしまだそこまで遅い時間でもないだろう。


そう思っていた。次の一馬の言葉までは。
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