彼は、理想の tall man~first season~

「大丈夫?」

「んー、ねむぃ」

「終わったらタップリ寝られるから、頑張って」

「はーい」


そう言えば、女性向けの洗顔フォームやメイク落としの類が無いということに今更気付いた。


「あのさ、メイク落としとかないけど」

「んー? 切れてたっけ? でもバッグの中にある」

「――あるの?」


大きく頷いた彼女。

俺は洗面台と壁に彼女を寄りかからせ、急いで彼女のバッグを取りに自室に向かい、バッグを掴んで脱衣所まで戻った。

意外にも重たかったバッグ。

それを渡すと、しゃがみ込み、彼女はガサゴソと中を漁り始めた。


あったぁ――の声と共に、メイクが落とせるシートらしき物が彼女の手にはあり。

それから、小さい洗顔フォームと、小さなボトルも取り出していた。

それが化粧水の類だと判ると、

「用意周到だな」

俺の口から漏れた言葉。

それに対し、だってジム行った時なにかと困るでしょ――と、彼女は返して来た。

納得しながらも、女性はなにかと大変だなと思わずにはいられず。

彼女がメイクを落としている間に、俺はたまによろけそうになる彼女を支えながら、どうにか歯を磨いた。
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