彼は、理想の tall man~first season~

「服、シワになるから、一回起きて着替えられる?」

「かお、も、あらう」

「それじゃ、起きて」

「んー、歯も」

「着替えたら連れてくから、取りあえず着替えて」

「はーいっ」


目を瞑りながらも、シャツのボタンに手を掛けた彼女を見て、俺も着替えておこうと思い部屋を後にした。

戻って着替えていなかったらどうしようかと考えもしたが。

少し時間を置いてから自室に戻ると、彼女はちゃんと着替えて寝ていた。


あとは顔と歯か――。


姉貴が学生時代、酔って帰って来てからこんな風にお守りをしたな、なんて思い出し、寝ている彼女を見ながら、ふと笑ってしまった。


「顔はどうする?」

「ん、あらぅ」


ただ、その姉貴と違うのは、酔っているんだか寝ぼけているんだかな状態でも――その姿がヤケに可愛く見え。


「ちゃんと掴まって」


大きく頷く彼女は、こちらの言葉には従順で、寝たら叩いても起きない姉貴とは、大違いで割と扱いやすかった。


ただ――こんな状態で、相手に言われるが儘に行動している彼女が、少し心配になった。

まぁ、俺を尚輝と勘違いしているだけならいいが。
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