彼は、理想の tall man~first season~

「そんなことないでしょ。俺、美紗ちゃんなら片手でも持ち上げられると思うよ」

「えー、そんなの絶対無理」


あれれ?な感じの方向に、話が向かってしまった。


なんで体格のことを振っちゃったんだろうって、ちょっと後悔しながら慌てていた時――試していい?

なんて、そんな言葉の直後、私の腰には敦君の手が回り。

「――ひぁゃっ」

気付いた時には、腰にグッと力が込められ、ひょいと持ち上げられていた。


自分の手が、何も掴んでいなかったから、突然の浮揚に怖くなって、私は咄嗟に敦君の体に手を廻してて。

ストンと地面に下ろされた時には、私は敦君に抱き付いたような状態で――。

不覚にも、敦君を見上げるようにして顔を向けていた私は、敦君と目が合って。

その目から逸らせずで。

一瞬、時が止まったような――そんな感覚を憶えた。


ただ、目が合った状態で、これからどうなるのか――。

というか、お互いがなにを望んでいるのかは、見つめられて、目が合った瞬間に、それを感じて――察した。


そうして欲しいって気持ちが、少なからずあった私は、時の流れと気持ちのままに、そっと目を閉じた。
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