彼は、理想の tall man~first season~
こんな風に誰かとキスをしたのは、いつ振りだっただろう?
もしかしたら、こういうのは、初めてかも知れない。
昔は、これに嫌悪感を抱いたらそのまま離れて、それ以上は無理って、やんわりそんな雰囲気は出していたように思う。
でも――自然とこの状況を受け入れられている私がいた。
いつの間にか、ストンと心の納まる所に納まっていて。
自然とこうなることを受け入れられていた自分に、少し戸惑いもあったけれど。
重なり合った唇に、否応なしにドキドキさせられた。
真っ昼間から、こんな所でなにしてるんだか――って、ちょっとばかりは思いもしたけれど。
離れることは出来なくて、意のままのキス。
もう少し、あと少し――。
そんな風に思っていたキスは、刹那に離れてはくっついてを繰り返していた。
雰囲気的には完全にピンク色だった、そんな甘きひと時――。
そのピンクな雰囲気に、天敵とも思える、ゴロゴローなんて雷様の音が遠くで鳴り聴こえ。
私も敦君もハッとしたように、固まった。
そして同時に見上げた空には、いつの間にか、ダークグレーの雲が張り出していたのだった。