彼は、理想の tall man~first season~
chapter.33

「それにしても、よく降られるね」


車内でほんのひと息ついた後、敦君から発せられたその言葉。

それは、季節的なものもあるんだろうけど、本当にそうだなと思って、私は同調するように、ふふっと笑っていた。


フロントガラスには、徐々に強まる雨が映る――。

それに比例して、雨音も大きなものになって行く。


幸い、素早い移動だったから、雨に濡れたというほどのことには至らずで、雨音を聴きながらホッとしていた。



いよいよ本降りになった雨。

「止むまで、動かない方がいいのかな・・・・・・」

不慣れな新車で、ゲリラ豪雨に挑む勇気はなくて、私の口からは、力ない言葉が漏れた。


「様子は見た方が良さそうな降り方だけど――」

洗濯物とか、大丈夫?

敦君にそう聞かれて、午前中にベランダに干して来た洗濯物を思い出した。

慌てて携帯を取り出して、尚輝に発信。

なかなか繋がらない電話にやきもきしていると、まさかの留守電。

一度切り、メールを打とうか、もう一度かけ直そうか考えていた時、尚輝から着信で、私は直ぐに通話ボタンを押した。


「っ、もしもし」

『ん? どうした?』
< 753 / 807 >

この作品をシェア

pagetop