彼は、理想の tall man~first season~

「降られそうだな」


敦君のそんな呟きの直後、ポツリポツリと雨は降り始めた。

ゲリラ豪雨でないことを祈りながら、敦君の助言で私達は、車へと足早に向かった。


今日は朝から良く晴れていて、梅雨の中休み的な天気だったから、まさかの雨にガッカリ。

雨はまだしも、雷は本当に勘弁して欲しい。


ただ――さっきの状況を考えると、今のこの状況は、良かったような気もしていた。


あのままキスをし続けていたらどうなっていたのか?

どうにもなっていないかも知れないけど――普通に離れたとしても、まともに敦君の顔なんて見られなかっただろうし。

どんな雰囲気で、その後どうやって会話したらいいのか。

ちょっと考えても、難易度はどうにも高かった。

雷は大嫌いだけど、ある意味では恵みの雨にはなったような。


高度のドキドキから多少解放された私は、ピンクな雰囲気をガラリと変えた雨を避け、車へと乗り込んだ。
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