償いノ真夏─Lost Child─
ちらりと見れば、人の隙間から朝霧と目が合った。
彼女は困ったように、肩をすくめて笑った。
その表情が何とも可愛らしく、真郷の心臓が跳ねる。
はっきり言って、他の人間など煩わしかった。
うるさいのは苦手だ。
「ごめん、職員室行かなきゃ」
適当に理由をつければ、あっさりと席を抜け出せる。
あんな意味のない質問攻めは、つまらない上に面倒だ。
人の気に入る答えを探すのは、意外と難しいのだから。