償いノ真夏─Lost Child─

そんな真郷を、フミ子は不思議そうに見ていた。

「そのミルク、どうするんです?」

「仔犬にあげるんだよ。今日から、うちで飼おうと思って」

「へぇ、ワンちゃんを。奥様とお嬢さんには?」

「……後で言うよ」


そう言うと、真郷はミルクの入った器を持って、フミ子に背を向けた。

もし祖母や母が捨てろと言っても、そんな真似は絶対にしない。

東京に戻るときは、一緒に連れて行けば良い。

父は動物が好きだから、何の問題もないだろう。


自室に戻り、毛布にくるまった仔犬の前に器を差し出す。

鼻先を鳴らしながら、ミルクを舐め始める姿に、真郷は愛しさを感じた。

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