償いノ真夏─Lost Child─





夕食の時、真郷はこう切り出した。


「犬、飼いたいんだけど」


祖母と母が、箸を止めて真郷を見た。


「急に、どうしたの?」

「今日拾ったんだよ。雨の中で捨てられてた仔犬。今、俺の部屋にいるんだけど」

「──まぁ。お母さん、どうしましょう」


母が、慌てたように祖母を呼んだ。

祖母はじっと真郷を見た後、再び箸を動かし始めた。


「──飼えばよかろ。犬の一匹や二匹くらい」


あっさりと、祖母は許可した。

一番驚いたのは真郷自身に違いないが、母も驚いているようだった。

「ありがとう、おばあちゃん」

祖母は鼻を鳴らし、続けた。

「そのかわり、離れでお飼い。犬の鳴き声は年寄りの耳には煩くてかなわん」

「うん、わかった」


祖母はそれだけ言うと、後はいつも通り、むっつりと黙ったままだった。

母は、真郷が我が儘を言ったのが嬉しいようで、異を唱えることもなかった。


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