償いノ真夏─Lost Child─


台所には、フミ子の姿があった。

それはごく当たり前の風景で、真郷を安心させるには絶大な効果だ。

「フミ子さん、ごちそうさまでした。食器置いときます」

「あらぁ坊っちゃん。わざわざありがとうございます」

「いえ……あの、母さんはどこに?」

辺りを見回してみても、母の姿が見当たらないので不審に思う。

「お嬢さんなら何処かへお出掛けになりましたよ」

「いつ頃ですか?」

「もう一時間くらい前ですかねぇ。坊っちゃんのお友達がいらっしゃってすぐですよ」

「一時間……」


いや、母は。
確実に今さっき部屋を訪れたはずだ。

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