償いノ真夏─Lost Child─
*
家に着いて、出迎えた祖母に離れへ通され、真郷は荷物を自室の床に置いた。
畳に埃が積もっている。おそらく、掃除の手が回らないのだろう。
「──狭いよりは良いのかな」
はぁ、と溜め息が漏れる。同時に何となく力が抜けて、ずるずると崩れ落ちた。
扉ごしに、外の様子が聞き取れる。やけに響くのは、母の泣き声だった。
「じゃから反対したのだろうが。勝手に家を出ていきよったくせに離婚なんて、恥ずかしい」
「……仕方ないでしょう。愛してたんですもの」
「世間知らずの生娘だったから漬け込まれたんだ。都会の男なんて、ろくなもんじゃないと言ったろう」
祖母の言葉に、真郷は眉を寄せた。
厳格な祖母が昔から父を良く思っていないのは知っていたが、誤解があるように思う。