償いノ真夏─Lost Child─
逢瀬に行く若者の正体を見破った山伏に、夜叉は殺されてしまった。
その怨みの魂は神社の御神木に封じられ、骸は鱗沼に沈められた。
しかし正体を知ってもなお夜叉を愛していた娘は嘆き、夜叉の沈む鱗沼に身を投げた──。
それから、村を日照りが襲った。
夜叉と娘の祟りだと考えた村人達は、夜叉と娘を手厚く供養し、今でも二人の命日の八月二十日には祭りを行って雨乞いをする。
「それが、御夜叉祭り。なぜ五年に一回かっていうと、夜叉が娘と会うことができたのが五年だったからだよ。だから、その期間は二人のデートを邪魔しちゃいけないってことさ」
そこまで語ると、夏哉は息を吐いた。
「なんだか、そうなると夜叉様って可哀想だな。未だに村人のエゴに振り回されてるんだから」
「はは、真郷はそう言うと思った。確かに悲しい伝説だけどな。そうだ、これからちょっと、神社まで行かないか?案内がてら」
その提案に、真郷と小夜子は頷いた。